試乗IMPRESSION
トヨタ ヴィッツ

 背の高いフォルムの恩恵は、ドアを開けて乗り込む瞬間から実感できる。ヴィッツのヒップポイントはフロントが580mm、リヤは610mmと、乗用車としてはかなり高め。要するに、立った状態からお尻を横にスッとずらした位 置に、ちょうどシートがあり、自然な姿勢で楽に乗り込むことができるのだ。日常の足として使われることが多いコンパクトカーにとって、乗降性は非常に重要なポイントになる。加えて、コンパクトなボディと優秀な小まわり性は、狭い道や駐車場での取り回しにドライバーにとって大きな自信を与えてくれる。
 走りに関して、ヴィッツには、ふたつの個性が用意されている。ひとつは”U”を含めた標準グレード。もうひとつは、スポーティな味付けのサスペンションをおごったユーロスポーツエディションだ。標準グレードの乗り味はソフトな味付け。路面の継ぎ目や段差などでは、省燃費系タイヤにありがちなゴツゴツした硬さを伝えてくるが、一般良路では常に快適な乗り心地を提供してくれる。その点、ユーロスポーツサス仕様は、路面状態による乗り心地の変化の度合いが小さい。個人の好みにもよるが、一般的な価値観からすれば、標準仕様のしなやかな足まわりを好む人のほうが圧倒的に多いと思う。
 ハンドリングは、基本的に素直で扱いやすい性格に仕上がっている。ことさらステアリング操作に気を使わなくても、狙ったラインをきれいにトレースしてくれるし、直進安定性もシッカリしている。唯一、速めのコーナリング中に、ゆるいブレーキをかけるとリヤがスッと流れやすい点は気になったが、それ以外、とくに指摘するような部分はない。
 新開発の1lエンジンと4速ATのコンビネーションは、なかなか軽快な走りを生み出してくれる。もちろん、背中がシートに押し付けられるような強力な加速とは無縁のクルマだが、高速道路への流入や山岳路を含め、パワー不足を痛感することはまずないだろう。 ただ、走って楽しいのは5速MTのほう。この組み合わせは、予想以上によく走る。
 騒音レベルは、リッターカーの水準をラクにクリアしている。しかし、セルシオやウィンダムで静粛性の新境地を切り開いたトヨタのクルマとしては、ややモノ足りなさが残る。